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蜘蛛の巣
第1章 出逢い

"ん……?"
ふと耳にピアノの音が入ってくる
"モーツァルトのトルコ行進曲?"
母親がクラシック好きだった華は何の楽器も弾けないが曲だけはよく知っていた
"邸内にBGMまで流すなんてすごいなぁ"
歩きながらそんなことを考える
「ねぇ、ハナ! 聞いてる!?」
隣にいた綾斗が怒ったような声で華を引っ張った
「え? あ、ごめんねアーヤ」
「もう! ここがボクの部屋で、とな……」
「隣がボクの部屋でーす!」
茅斗が二人の間に割って入る
いまだ不機嫌な綾斗は弟の介入に苛立った様子を見せた
「あ、アーヤ! 中見てもいいかな?」
さすがにこれ以上険悪な雰囲気になるのはマズイのではと華は明るい声で提案する
「うん! いいよ!」
とたんにパッと顔を輝かせる綾斗
その表情に華はほっとした
「じゃあ、僕はそろそろ勉強に戻ろうかな。またあとでね、華チャン」
「あ、はい……」
華はそれしか返せないまま煉の背中を見送るしか出来なかった
二十四歳、和服で過ごす斑目家の跡取り
「煉さんて一体……」
煉の姿が廊下の角に消えた時、華がポツリと言った

