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蜘蛛の巣
第12章 あの日々は遠くーーー
華は首を傾げつつ壮真の後について部屋を出た
壮真は扉を閉めると、結利に聞かれない為か声を低くして切り出す
「もう聞いてると思うけど、明日の結利の誕生日会の開始時間のことで」
「……聞いてません」
「えっ」
わざわざ小声で返した華に対し、何故か壮真の方が驚いてボリュームが大きくなる
「誰からも?」
華はこくりと頷いた
ここの人たちは誰かが言っているだろう、もう既に知っているだろうと思ってしまう傾向にあるらしい
それだけここでの生活に慣れ切っているということか
「そっか……ごめんね、急な話になっちゃって」
「いえ、まぁ当日よりは良かったですし」
華は笑いながらそう言うものの、内心ではかなり焦っていた
旅行の時以上に日が迫っているし、橘のいつもの指示と違って準備が必要だ
「とりあえず、明日の夜七時から。場所はいつも通り食堂ね。そんな大したものじゃないから」
“大したものじゃない”と言ったって、身内の誕生日会でレストランを予約しているわけでもないのにきっちり時間が決まっている辺り、相当怪しい
だがとりあえずはプレゼントの用意だ