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蜘蛛の巣
第12章 あの日々は遠くーーー
「……?」
橘の挨拶をよそに要は華の方をじっと見ていた
今までの彼なら、彼女の姿を捉えてもチラッと一瞥するだけだったのに。
まるで華の姿に驚いているかのように唇は薄く開いている
切れ長の冷たい目は僅かにその大きさを変えていた
「……あの」
あまりにも見てくるので耐え切れなくなった華はついに自分から口を開いた
「私、何か変ですか?」
その言葉にハッとしたように要はゆっくりと目を瞬く
そしてすぐにいつもの表情に戻り橘の方に向き直った
「着替えたらすぐに向かわせますので」
「ん」
使用人頭の言うことに軽く返すとサッと踵を返して去ってしまった
“何だったんだろ……”
橘に急かされながら華は考えを巡らせる
そしてもう一つ問題が。
“ユウくんの誕プレ…どうしよう……”
二つの課題にしかめっ面をしながら食堂へ向かおうとした華の目に、部屋の窓際に無造作に置かれた裁縫セットが映った
「華様! 何をしていらっしゃるんです?」
「あ、今行きます!」
華はもう一度それをチラリと見やってから、橘の後について部屋を出た