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蜘蛛の巣
第12章 あの日々は遠くーーー
煉に続いて壮真が前に進み出る
「大したものじゃないんだけど……結利なら喜んでくれるかなって」
そう言って取り出したのはーーー
「うわっ! マルタ・ポルチーニのサインじゃん!」
「……誰」
自分の時と全く違う喜び様に煉は少し拗ねているようだ
「世界的な大ピアニストだよ! オレだってまだ生で聞けてない!
壮真、これどうしたんだよ!」
「この前父さんが出席した外交パーティーにゲストとして呼ばれていてね。それを先に聞いていたものだから。恥ずかしいけど、親の力だよ」
「そんなことないって! マジ嬉しいよ!」
「なんだ、サイン一つでそんなに喜ぶなら僕もあげるよ」
「壮真様々だな!」
「……おーい」
煉の渾身のボケも虚しくスルーされる
"うわー…この後出しずら……"
要もそう思っているのだろう
珍しく困ったように眉間に皺を寄せてプレゼントを渡せずにいた