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蜘蛛の巣
第14章 想いの渡し方
いつもより一層女性らしい彼女を前にしながら不愉快そうな顔をしているのは、綾斗だった
楽しそうにはしゃぐ二人を見てプレゼントを持つ手に強く力が入る
「この日は絶対空けといてね!」
「アーヤは来るの?」
「ううん! ボクたちだけだよ!」
包装紙がその中でくしゃりと音を立てた
「……アーヤ? どうかした?」
煉の声にはっと我に返る
「次、アーヤの番だよ」
「う、うん」
慌てて皺の寄った部分を直し、両手に持ったそれを華に渡した
「もしかしなくても……ラケット、だよね?」
ラッピングされていても一目でそうと分かる形
華の確認に綾斗は大きく頷いた
弟とは対照的に珍しく静かな綾斗を前に華は包みを開く
「……あ!」
「気付いた?」
「うん……クスッ」
持ち手より少し上の部分に器用に小さな文字が書き込まれている
“誕生日おめでとう! これからもよろしくね。綾斗”
やることが何だか可愛い
華は思わずにっこりと微笑んだ
「……気に入らなかった?」
「え、どうして? すごく嬉しいよ」
そう言って大事そうにラケットを抱えるのを見ても、綾斗の気持ちは落ち着かない
カーヤの時はもっと笑っていたのに−−−