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蜘蛛の巣
第16章 軋む
一週間経っても、華の迷いは消えなかった
「華が嫌がるから皆でお祭りに行くのはやめたよ」
「えっ、じゃあ……」
「うん、例年通り二人で行こ」
「なんかすごい……申し訳ない」
次の講義の為に真里枝と教室を移動している時、ふとそんな話題になった
人前では努めて明るく振る舞おうとする華だが、付き合いの長い親友には隠しきれないのかもしれない
気を使ってくれたのかーーー
「いいのいいの! やっぱ長年の友達は大切にしなきゃね!」
「でも私まだ行けるか分かんないよ?」
橘さんの許可を貰わないと、と思いながら先日の失態が頭に浮かぶ
「えー、まだ分かんないの!? もー、お貴族様は面倒くさいなぁ」
ーーー最近、真里枝の華に対する皮肉が強くなっている気がする
「せっかくここまでしたんだから一緒に行こうよ〜」
「うん、行きたい……」
「まぁ決まったら即連絡して。
あ、私ちょっとトイレ」
真里枝は華に荷物を預けると角を曲がってトイレに入って行った
華も通行人の邪魔にならないよう少し奥まった所で彼女を待つ
一人になるとどうしても考えてしまう
"お貴族様"としての自覚を待たなければいけないのかとーーー