この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
蜘蛛の巣
第19章 傀儡子
「少し落ち着いたら出発しましょう」
「ああ……」
呉羽は主人〈アルジ〉をよく理解している
だが優しくはない
体調を崩しやすい遥のために特別に作られたお茶を用意する一方で
彼を休ませることは今まで一度たりともなかった
「……」
「大丈夫ですか?」
「ああ。出せ」
質問されても無理だとは言えない
それは彼が己れの立場を理解しているからでもあった
帰るまでは、帯一本緩めることは許されないのだ
そしてさらに憎たらしいことは–––
「本当に、お前のお茶は万能薬だな」
「恐れ入ります」
普通の人間なら一口でやめるほどのこの苦い茶は、本当に効果が抜群なのだ
鎮痛作用や、解熱作用–––他諸々。
遥の中にあった早霧当主としての自覚を妨げるもの全てが、呉羽によって溶かされてゆく
狂わされて、ゆく–––
******************************