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蜘蛛の巣
第1章 出逢い

「ああ、ごめん。なんか色々メンドイもんな、この一族」
だよね、と二人は同じ気持ちを共有する者同士すっかり意気投合した
「ここだよ」
そんな話をしているうちに目当ての部屋に着き、結利が扉を開く
「そうだろうとは思ってたけど……」
もういい加減驚かないが、当然のように置かれたグランドピアノに華はひきつった笑みを浮かべた
「何から何まで格が違すぎる……」
「ん? なんか言った?」
「ううん、なんでも」
結利はピアノの蓋を上げてその前に座る
先入観のせいかもしれないが、空気から佇まいから全てがピンと張り詰めた気がした
"音大生ってすごい……"
緊張で喉がゴクリと鳴る
「いつもならリクエスト受けるんだけど、今日は明後日までの課題曲練習したいんだ。いいかな?」
「もちろん」
華が頷くと、結利は前を向いて鍵盤に指を置く
"綺麗……"
音はもちろんのこと、弾いている姿もなんだか美しかった
優しく軽く鍵盤を叩くその動き
先ほどまでの身近さはどこへ行ったのか
華はただただ魅せられてじっと彼を見つめていたーーー

