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蜘蛛の巣
第19章 傀儡子



そもそもこの家が壊れていないというなら

壊れているのはこの世の中の方だよ–––





「……」



黙ったままの要に、煉は再び笑みを浮かべ近くの椅子に座り込んだ

深く腰掛け脚を組む



「どうでもよくなくなっちゃった?」

「何……?」

「仮に遥さんにその気があったとして…みんなが蹂躙されていくのに耐えられなくなっちゃったのかな?」



小説家独特の言葉選びは、抑え付けられた要の心を引き摺り出そうとする



「…っ……意味が分からな…」

「なら何も知らない華ちゃんが壊されていくのが、かな。

無垢な心が、躰が穢されていく……何処かで見たような光景だ」

「この……っ!」



ついに理性のタガが外された要の拳が振り上がった

だが当然見越していた煉は、それを易々と受け止め彼を床に引き倒す



“ま、無垢であること自体が悪かったりもするんだけど”



無様な要を見ながら心の中で嗤う、そんな煉の一面をどれほどの人間が知っているだろうか


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