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蜘蛛の巣
第20章 嫉妬の行先
「白河綾斗だ」
「は……?」
「すぐに分からない? だとしたらあんたの事務所はどっちにしろ長くないね」
トン、と指を押し離すと、しばらくして男の顔がみるみる蒼くなっていった
「し、白河……って……」
「そういうこと。証拠写真もばっちりあるしね」
綾斗はついさっき撮った写真を男の前に突き出した
「…っ……すみませんでした!!」
男はいきなり頭を下げ–––いや、それどころか土下座までしようとする
あまりの大声にこちらに注目が集まり始めていた
「いいから。分かったらさっさと失せろ」
そこにいつものような明るい笑顔はなく、怒りに満ちた眸が鋭く男の身体を射抜いていた
「ひっ……」
相手は怯え、硬直した身体を必死に引き摺り転がるようにして走り去ってゆく
「……」
その姿が見えなくなったのを完全に確認してから、綾斗は華の方へと振り返った
「……大丈夫?」
「…うん……」
震える身体を止められない
そして綾斗は、華が全身で“ごめんなさい”と訴えているのを感じ取った