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蜘蛛の巣
第21章 更なる深みへ

「私…あれ……?
ごめんなさい!」
何が起こったのかも分かっていないようだったが、咄嗟に頭を下げる華
「……」
要はとりあえず本を拾うと、目線を元の位置に戻し今度は彼女を見下ろした
おどおどしているのは、まぁいつもの自分の態度のせいだろう
“…気のせいか”
そう思って通り過ぎようとした時
廊下の端から黒い燕尾服姿の男が現れるのが見えた
「……呉羽」
早霧家の–––遥の執事である彼を、要は思い切り睨みつける
「京堂様、お話し中失礼致します」
「何の用だ」
「いえ用があるのは貴方ではございません」
丁寧な口調の端々に鋭い棘が感じられる
「華様、遥様がお呼びですよ」
「……」
要は思わず横目で彼女の反応を窺った
“……!”
「はる か…さん……?」
その顔はさっき見たより一層蒼白で、全身が震えているのがよく分かる

