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蜘蛛の巣
第21章 更なる深みへ
肯定しているようで、否定している
「……っ」
要は本を握り締め、何も言わなかった
自分が何を言われてもこれ以上京堂を貶されるわけにはいかない
何を言っても無駄だと分かっているから、ただ黙っていた
「やめてください」
だがここに、その理を理解しない者が一人
「要さんを……京堂家をそんな風に言うのはやめてください」
白河華
先ほどまで何かに打ちのめされていた彼女が–––早霧遥の名前に怯えていた彼女が、はっきりと抗議の声を上げていた
「……」
呉羽はほんの一瞬、無表情に華を見た
“馬鹿な女”
ついさっき引き止めようとしたことも忘れて、要は心の中でそう呟く
彼は橘よりもだいぶ若いがずっと上の立場にあることを彼女は知らないのだろうか
「大変失礼致しました」
だが呉羽は何を言うわけでもなくただそうして頭を下げる
今度は要の方が、警戒して彼を見つめる番だった