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蜘蛛の巣
第21章 更なる深みへ
呉羽光鶴〈ミツル〉
食えない男が、ここにも一人
この屋敷には策略が多過ぎる–––
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「こちらです」
要に見送られる形になってから数分、華は以前と同じ部屋の前に連れてこられていた
「はい……」
さすがに緊張が隠せない
「クッ…」
執事が思わず漏らした笑いに、華は怪訝な反応を見せた
「申し訳ございません。あまりに固くなっていらっしゃるので」
当たり前だと言おうとしてやめる
あの夜のことを、呉羽が知っているとは限らない–––
“……まぁ、知らないわけないか”
案の定、続けられた言葉はそれを仄めかすようなものだった
「ご安心下さい。今日は私も後ろに控えておりますから」
「……」
この男には、言っていいことと悪いこと–––いわゆるデリカシーというものが、ないのだろうか