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蜘蛛の巣
第22章 理由
自分たちを取り囲む女子陣の壁の向こうで、数度見かけた青い影。
自分とお揃いの髪飾りを彼女が見間違えるはずはなかった
“どうしてあそこに……”
疑問に思ったところで訊くことなど出来はしない
華は教科書を前にただぼうっとしていた
コンコン
「……」
コンコンコン
「……!
はい! どなたですか?」
やっとノックの音に気付いてそう尋ねる
この部屋に来てノックをする人間など一人しかいないのだが–––
「呉羽です。今、よろしいですか?」
風呂上がりだろうと何だろうと“よろしく”してしまう彼にはあまりにも形式的な言葉だ
「何でしょうか……」
扉を開け顔を覗かせる華。
「遥様がお戻りになりました」
「お出迎え、ですか……?」
別にお出迎えをしたことがあるわけでもないのにそう訊く華は、さすがの呉羽も笑いを堪えられなかったらしい