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蜘蛛の巣
第24章 水面下
通り過ぎる景色が森からビル群へと変わってゆく
遥は窓の外のそんな景色も、そして窓に映る自分自身も見ずにただ考えに耽っていた
’出がけに煉さんがくれたんです’
”試写会チケットは二枚ひと組が基本だったな……”
存外わかりやすい煉の意図に鼻を鳴らす
”そんな見え透いた罠で……アイツがどう動くか見ものだな”
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黒長のリムジンが、青い車の前にスッと停車する
リムジンが目の前に止まって驚かない方がおかしい
左肘を窓枠に預け歩道に目を向けていた運転手は思わず目を見開いていた
「……」
そして中から出て来た人物にさらに言葉を失う
普段あまり表情を表に出さない顔を最大限使って–––
「……っ」
次の瞬間、男の顔は嫌悪感に強く歪んでいた
”…アイツ……”
驚愕の表情はリムジンが目に入ったからではない
そのリムジンが”見覚えのある”リムジンだったからだ