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蜘蛛の巣
第4章 穏やかな日
『何……どしたの突然』
「私、ショッピング行きたい。今から急いで準備するからお昼も一緒に食べよ!」
今はこの邸にいたくなくて、昨日の出来事を忘れたくて華は必死にそう訴える
『え、お昼は……ごめん、もう親が作っちゃってるから』
「じゃあ夜ご飯だけでも! それまで付き合って!」
『別にいいけど……何かあったの?』
何かあったのかと聞かれて答えられるものではなかった
ただとにかく一同が介する食事にだけは顔を出したくない
そのくらい華の頭は混乱していた
『……まぁいいや。じゃあ二時に駅前のショッピングモール。いつもの時計台の下でいいよね』
「うん、ありがとう」
親友にお礼を述べ電話を切る
華は体を震わせながら自分の部屋を見渡した
どこにも、壮真と交わった形跡はない
夢だったとーーーそう思いたいが、脚の間の違和感がそうではないと教えていた
ふと、窓際に置かれた丸テーブルの上に小さなメモが立ててあるのが目に止まる
"橘さんたちには今日は仕事をさせないよう頼んでおきました。一日ゆっくり休んで。あまり気に病まないように"
「壮真……」
最後に書かれた名前を呟き、やはり現実だったと分かってしまう