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蜘蛛の巣
第4章 穏やかな日

「それで、君はそんなに急いでどこに行くつもりだったのかな?」
「あ、あの……橘さんに、駅まで送ってもらおうと……」
「ふぅん……あの人がそんな気の効いたことしてくれるかねぇ」
煉は顎に手を当てて考え込む仕草をした
「あ、もし良かったら僕が送ってあげようか」
「えっそっそんな……申し訳ないです!」
「いいのいいの、どうせ僕も出掛ける用があったんだ。それに」
煉は急に肩を抱いて体を密着させてきた
「こんな可愛い子が困ってるんだから、助けてあげるのは当然でしょう?
チャンスはモノにしなきゃね」
「……っ」
「……ハハッ、冗談ですよ」
一昨日触れた時とは全く違う華の反応に、煉は肩を竦めておどけてみせる
「とりあえず着替えてくるから、先にガレージ行っててね~」
結局、華の認否は全く聞かないまま煉はそう言ってその場を後にしてしまった
"言うんじゃなかった……"
ガレージの入り口に立ちながら華は後悔の念を募らせる
"いやでも、これから一年ここで過ごしていくわけだし、そんなことも言ってられないよね……良いリハビリだと思おう"
前向きに捉えようと深呼吸を繰り返す
"そもそも、男の人が皆あんなわけじゃない……あんな…遥さんみたいな……"
あの人が異常なのだ
そのことはよく分かっていた

