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ホントの唄(仮題)
第4章 僅か、重なりゆく情景
左手の動きが、絶妙に艶めかしかったから。
真が手馴れているのだと――俺は、知るのだ。
「ほら――ちゃんと反応してるよ」
それは、朝だけに――と、俺は言おうとして、それは流石に止める。
じわり……と力を伝えていた掌が、俺の男の箇所をあざ笑うかのよう。親指と人差し指で作った輪が、首から根元までをじっくりと往復してゆく。
与えられし感触に応じて、更なる硬さと熱がその一点へと集中した。
だが、辛うじて俺は――まだその快感に身を委ねることを、良しとした訳ではない。
「ふ、ふざけるのも大概にしとけ」
確かに右の手足は縛られ、枕にされた左腕にもまだ痺れは残っている。しかしそれだけのことで、仮にも大の男が身動きを封じられてやる訳にはいかないのだ。
縛られているとは言ってみても、タオルとちゃぶ台の脚の拘束はあまりに脆弱。ほんの僅か力を込めれば、造作もなく解くことができよう。それにその気になれば左脚だけでも、とりあえず真の身体を遠ざけることも可能だ。
「ほら――早く離れろ」
そんな風に思いつつ、俺は真に言うのだが。
「嫌だね」
と、即答する真。
それを受け。俺が「はあ」と大きくため息をつきつつ、実力行使に訴えようとした時であった。
「動かないで!」
真の厳しい口調に、期せずして俺はその初動を止められてしまっている。