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ホントの唄(仮題)
第4章 僅か、重なりゆく情景
「…………」
男という性が、絶頂に浸る時間は存外、短い。
二十歳そこそこだった時分の感覚は、既に過去の記憶の中を探して断片を見つけることすら容易ではなかった。
が――おそらく。
射精時の快感というものは、間違いなく過去の方が勝っている。
否、それは快感それ自体に於ける、強弱の差異ではあるまい。
現在の歳だからこそ感じるのは、夢見心地から覚め出すまでの――その早さなのだ。
だが、それもやや違う。
何故なら俺は、この瞬間こそを初めから恐れていた筈……。
それだから――
クスッ――と。
聴こえていた微かな笑みが、俺のそんな想いを一気に倍増してしまうのだ。
「オジサンの……とても、たくさんだね」
「……」
「どうかなぁ、私――気持ちよく、できた?」
この一瞬の気まずさに、視線さえ合わせることもできずに。
「うるせーよ……さっさと手足を解け」
俺は顔を背けたまま、辛うじてその様な悪態をつくより他に、ないのだった。