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ホントの唄(仮題)
第4章 僅か、重なりゆく情景
※ ※
ああ、畜生……。
と、内心で嘆くも、それも後の祭りだった。
昨夜の頭の中で築いた自分なりの一線は、一晩寝たこの朝に早くも有耶無耶とされてしまっているのである。そう言えば如何にも真のせいにするようだが、当然ながら己の迂闊さを棚に上げる訳にもいくまい。
ともかく、真と男女の関係を持たないとした決意は、この時点で大きくその意義を失ってしまった。きっちりと線引きしたつもりの領域が、押し寄せるさざ波により乱雑に散らかされた、とそんな感じか……。
まあ、しかし――これを男女の関係とするのも、些か語弊があろう。
結果的には、真の一方的な行為が俺に施されていただけ。否、だからこそ、この上もなくバツが悪くもある。それは、やはりいい年を喰らった男として、だが……。
こんなことなら、いっそ――と、そう考えてしまう自分を、俺は激しく諌めるのだ。
それにしても、コイツ……。
俺は何気なく、真の方を見やる。
「……」
当の真はと言えば、今朝も食欲旺盛に朝飯を平らげると、今はテレビを眺めすっかりと寛いでいた。
そんなごく自然な振る舞いを前にし。
本当に、何なんだよ……?
俺はまた、決して軽くない頭痛に苛まれていた。