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ホントの唄(仮題)
第4章 僅か、重なりゆく情景
まあ、そんな訳で三日目。
しかしその日数は、真と出会ってからのカウントではなかった。これは、言うまでもないことではあるが。付き合い始めてからの日数を克明に記憶し、年単位ならまだしも月単位でそれを記念日とするような、所謂バカップルの類と同様な思考は持ち合わせてはいない。
心底、どうでもいい話ではあるが。『付き合いを開始した日』はおろか『二人が出会った日』『初デートの日』『初めてキスをした日』その他諸々を、逐一二人の記念日として設定し祝い奉るような、そんなカップルの話を耳にして、思わず身の毛もよだつような想いをしたことがあった。
いや、それにしても……。そういった手合は、本当にこの世に生息してるのだろうか。実際に存在を特定した訳でもない俺にしてみれば、甚だ謎である。
その取り留めもなき言葉で言い表されし男女の番は、極端に視野が狭いが故に執拗に互いに執着してしまうものかと、それは一応の俺なりの推察。まあそれでも、若い頃の恋愛なんて後で思えば誰しも、「やっちまった感」は大なり小なり身に覚えがあるものかもしれない。
話が著しく逸れてしまった。言いたいのことはすなわち、俺が無職になってからこの日で『三日目』を迎えているいう事実だ。真にすっかり気を削がれてしまったことは否めないが、当然ながら俺がそのことを失念することはない。
早くどうにかしなければ――と、その様な焦りが休むことをしない時計の針の歩みのように、ジリジリと着実に俺の気分を圧迫していた。
にも、拘らず――である。
「ねえ、オジサン。今日は、どうしよっか?」
それは幼子が口にする「なにして遊ぶの?」と、ほぼ同義であるが如く。
真は飽くまで自由気ままに、俺にそう訊ねているのだった。