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ホントの唄(仮題)
第4章 僅か、重なりゆく情景
「うーん……私の場合は、ね……」
話すのが気が進まないということは、その語り初めですぐに感じた。感情を揺るがすような姿は見えないが、逆にわざと無関心を装っているようにも思う。
それでも真は、ぽつりぽつりとした言葉を連ねると俺に聞かせた。それは俺が予想してたよりも、随分と複雑な話であった。
彼女の両親が離婚したのは、まだ真が幼かった頃。真は父親に連れられると、暫くはその実家で暮らしていたとのこと。その後に母親と会う機会はなく「もう、顔も思い出せないな」と、真は言った。
仕事が忙しかった父親に代わり、真の面倒を見ていたのが実家の祖母であった。真の名付け親である「おばあちゃん」とは、どうやらその人のことであろう。だが何らかの想いを匂わせながらも、真は祖母のことを多くは語っていない。
父親が再婚したのは、真が調度中学に上がった頃。それを期に父親の実家を出たことが、一つのターニングポイントであるようだ。
否、それだと表現が誤っているのだろうな。未だ年端もゆかぬ当時の真に、己の意志を反映する力などある筈もなく。きっとどうしようもなく、大人の都合に振り回されたに違いなかった。
ともかく、真のその後に大きな影響となったのは、その時期。それが決して良くないものであったことは、真の言葉のより察することになるのだ。