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ホントの唄(仮題)
第4章 僅か、重なりゆく情景
新居となった真新しい都心のマンションの一室に、真は自分の居場所をついぞ見つけられなかったと言う。当然ながら彼女に個室が与えられない、という意味ではなかった。言うなれば、それはやはり心の居場所だ。
「別にお父さんの再婚に、反対するつもりなんてなかったんだけださ。でも、あの人とは、なんだかなぁ……」
その問題の多くは、おそらく父親の再婚相手――「あの人」と表する義母にあるようだった。その人となりについても多くは語らなかったが、少なくとも相容れない関係であると考えて間違いあるまい。
そう言えば、俺がネットで見知った情報では、真の個人事務所の代表は、その義母であるということだっけな……。
「結局……それからの私は、どんどん荒んでいく一方だった」
高校生なると、家にも帰らないことも度々だったようだ。クラスの女友達の家を転々と泊まり歩いたり、とそんな頃ならまだましで。その内には知り合った大学生の男のアパートに半同棲よろしく転がり込んでいた、とその様にも話している。
真のある意味での奔放さは、そんなことを繰り返す中で培われたものか。しかし一方では、当時付き合っていた男の影響で、本格的に音楽に目覚めたのもこの時期だとしていた。