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ホントの唄(仮題)
第5章 景色は騒々しく
その時、カチッと音がして鍵が開いた。
「はい、どうぞー。入ってきてもいいよー」
「バ、バカ! いいわけあるかっ!」
「私がいいって言ってるんだから、気にしないでよ。それよりも、早くしてくれない。ちょっと、胸が息苦しいわ。もしかして私、暗所恐怖症なのかも?」
そんな風に言う割に、その喋り方には一切の危機感がなかった。
くそっ、さてはコイツ、この機に乗じて俺を困らせて面白がってやがるな。そういうつもりなら、構うものか。本当に入ってやれ。
俺は洗面台の下の棚より代えの電球を手にし、ドアノブに手をかけ――
「入るぞ」
「いいよー」
「本当に入るからな」
「だから、いいって」
そんな会話のラリーを経て。
――ガチャ!
と、半ばヤケクソに、その扉を開いていた。