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ホントの唄(仮題)
第5章 景色は騒々しく
「あ、来た来た」
「お、おう……」
勢いそうしてみたものの、あまりに慣れないシチュエーションに、やはり俺は戸惑いを隠せなかった。部屋から差している薄明かりで十分な視界はないが、それでも期せずして襲った背徳感に顔を背ける。
それも、当たり前。用を足そうとする婦女子と、その空間を共にした経験などある筈もなく。というか、仮にあったら俺が単に変態ということになってしまうだろ。
「じゃあ、ボーっとしてないで、さっさとお願い」
「うるせえな。わかったよ……」
「あ、その前に、まずドアを閉めてね」
「はあ、なんで?」
「ここは、トイレよ。ドアが開いてると、落ち着かないからに決まってるじゃん」
「……」
俺はその支離滅裂な理屈に飽きれ果て、口をあんぐりと開けた。ここがトイレで、それが実にデリケートな場所であることは、真に言われるまでもなく認識している。