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ホントの唄(仮題)
第5章 景色は騒々しく
ドアを閉めることはもちろん鍵をも施錠して完全に自分だけの空間になるからこそ、人は初めて落ち着いて目的を果たすことができる。殊に排泄に些か神経質な俺にしてみれば、それは尚更のことだった。
であるのだから、先の真の言葉だけを取り上げて、それを否定することはできない。が、ドアを閉めるのは飽くまで他人の存在に配慮しての心理である以上、今、実際に俺を招き入れた状況でそれをしろと言われていることに合点がいく筈もなかった。
あまりの理不尽に際し、延々とどうでもいいことを考察していた俺は、少し呆然としていたのだろう。
「早く、閉めて!」
「えっ、ああ――!」
――バタン!
その強い口調に押され、俺は命じられたままトイレのドアを閉めてしまった。
再び闇と化したトイレの空間は、現在、俺と真の二人だけ(否、本来そもそも二人いることが可笑しいことは一応わかってるのだが)のものとなっている。
これが青く晴れ渡った気持ち良い天気の日曜日の午後の出来事であると、そう気づき。
俺は一体、ここで何を……?
自らの行いを、内省する想いを禁じ得なかった。