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ホントの唄(仮題)
第5章 景色は騒々しく
便座に鎮座している真の息遣いを狭い密室に感じながら、俺は訳もなく緊張する。暗がりで換気扇が回り続ける音を耳にしていると、背中にじわっと汗が滲んできた。
そんな中、真がポツリと囁く。
「ねえ、早くしてぇ……」
先程までのぞんざいな言い方とは違い、何処か甘えて懇願するが如く。それは視界がない故なのか。小声ながら脳裏に直接伝達されたように、生々しく響いた。
俺は、ゴクリと思わず喉を鳴らしている。
えっと……アレ。何を「早く」するんだったかな?
そんな間抜けな自問する俺には、最早、冷静な判断は失われていた。手にしたスペアの電球の感触で、何とか目的は思い出していたものの。
「ん……ん? 確か……この辺りだと……?」
少し背伸びをして両手を伸ばすと、俺は照明の位置を手探りで探った。
後で考えれば当然ながら、再びドアを開き部屋の灯りを取り込んでから作業すべきであろう。というかそもそも、真の無茶な願いに真剣に対処していること自体が到底真面ではなかった。