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第5章 景色は騒々しく

　彼女が世間を騒がせるニュースについては、ある意味ではやや小康状態にあると言えようか。否、現に真が俺の隣りでこうしてる以上は、騒動が収まることはなかろうが。それでも当初と違っているのは、その切迫感だ。

　今、ネット上を中心する『天野ふらの目撃情報』は、かなりの数を数えている。ＳＮＳにおいては画像つきで、その類が頻繁に投稿されている有様だ。そこには当然、俺の住むＳ市のものも含まれる。が、他にも九州から北海道、果てはハワイなどの外国までに広がりを見せていた。

　もちろん、その内９９．９％はガセであるが、そうしたものが多数あることにより逆に正しい情報を埋没させるという効果を生んでゆく。当初、この辺りを訪れていたテレビのレポータも、それ以来は来ていないようであるし。

　それに加え大きいのは情報が多いことにより、天野ふらのは必ず何処かに居るという空気が主にファンの間で蔓延している点。ニュースが流れた頃はネガティブに流れそうになりがちだった彼らの心理は、そんな意味ではかなり楽観的なものに変わっているように思えた。

　まあ、その点で一番救われているのは、ファンに心配をかけたと自覚する真自身であろうな……。