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ホントの唄(仮題)
第5章 景色は騒々しく
目的のショッピングモールに到着したのは既に夕方近くであったが、観光地にある人気施設の広大な駐車場はまだ多くの車で埋め尽くされていた。
人目を避けたい身の上としては、その場所を選ぶのは一見、無謀の様にも思う。だが、高が買い物でわざわざここに来たことには、それなりの考えがあった。
真の存在は、とにかく際立つ。仮に歌手としての彼女を知らない人であっても、はっと惹きつけるようなオーラがあるのだ。その意味では、地味な田舎街の中にある方が否応にも目立ってしまう。
その点、訪れていた巨大ショッピングモールは、休日となれば県内外を問わずに多くの人々が集う場所だ。当然ながらその中には、ファッションに傾倒している多くの若者たちの姿――殊に女性たちは派手で煌びやかに着飾り、自らを鼓舞するように闊歩してゆく。
すなわち逆にこっち方が、真が際立つ恐れが少ないと思ったからだった。もちろん元々噂が生じていたS市を出ることも、その一因とはなっている。