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ホントの唄(仮題)
第5章 景色は騒々しく
「わあっ! 広ぉーい!」
駐車場に車を停車し降り立つと、真は感嘆の声を上げた。各種ブランドショップが長く軒先を並べる様は、確かに壮観。その一点においては、都会とは異なる地方ならでは利点が生かされていると言える。
この様な場を訪れテンションを上げる真の姿は、その意味で同世代の女の子とやはり大差ないのだろう。無邪気に喜ぶ顔を見れば、それはそれで俺とて悪い気はしなかった。
だが軽く微笑みを浮べつつも、やや窘めておくことも忘れてはいけない。
「オイオイ、あんまり騒いで、目立つなよ」
「わかってるって。ホラ、行こ」
真は俺の腕を引き、ぐんぐんとその歩を進めた。
買い物にこの場を選んだ理由は先に述べた通りであるが、それは俺の希望的観測であり根拠には乏しい。実際、人混みに紛れて行くと真ほど豪胆でない俺は、人の群とすれ違うたびに肝を冷やしていた。
『あれ、天野ふらの、じゃない?』
いつ誰かが指を差し、そんな声が発せられるものかと、内心では怯えている。