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ホントの唄(仮題)
第5章 景色は騒々しく
「よかったら、詳しくお聞かせしましょうか?」
そう訊ねている太田に――
「……別に、いい」
俺はやや考えを巡らせた後に、そう答える。
「えっ、気にならないんすか?」
と、驚く太田。
気にならない訳ではなかった。だが仮に事情を知るにしても、コイツから聞かされる話では恐らく事実を正しくは把握できない気がしている。どうせ面白がって、妙な脚色を加えられるのがオチだ。
それに、思い当ることがない訳でもない……。
「それで、話は済んだか?」
ともかく、もうコイツと顔を突き合わせるのはウンザリ。最後通告のつもりで、そう言う俺であったが……。
そのタイミングで、もう一人現れた知人の顔を前に、俺はギョッとした。
「あー、いたいたぁ。もう、どこ行ったかと思ったじゃん」
その妙に甘ったるい声を発して、太田の二の腕にしがみついた女。
彼女の名は――亜樹。
敢えて俗的な言い方をすれば、この女は俺の元カノということになる訳だが……。
「……?」
その奇妙な組み合わせを前に、俺は少なからず唖然としていた。