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ホントの唄(仮題)
第1章 一人と一人
「へ、平気みたいで、良かったよ。こっちとしても、一安心だな」
「……」
「俺は単なる通行人……決して怪しい者じゃないぞ。君に何かしようなんて、そんな風に考えてた訳じゃないから」
「……」
「余計なお世話かとも思ったけれど、一応は……ほら、体調が悪いようなら、いけないと思って」
「……」
俺は何故か、言い訳じみた言葉に終始。
だが女は、無言。頭を垂れたまま、未だその顔すら見せようとしない。それでいて、俺の右手首はギュッと握り締めたままだ。
「えっと……とりあえず、放してくれない?」
そう言って、ようやく。女は伏せていた顔を、ユラリと起こした。
そして、その第一声は――
「お腹が……へったよぉ」
「は?」
両目に涙を光らせながら、女は神様にでも縋るように、俺を見上げている。