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ホントの唄(仮題)
第5章 景色は騒々しく
何かと騒々しくも、何とか無事に(?)買い物を終えた俺たち。その両手にはぴっちりと膨らんだ買い物袋をぶら下げている。アウトレットではあっても、今の俺にとってはかなりの浪費だ。まあ、いいけど……。
標高の高い避暑地の空気は、夕刻を迎えたところで涼しげなものと変わる。それを自然と深く吸い込みながら、駅前通りの街路樹を見渡しつつ駐車場へと向かって歩いた。
すると、不意に。真は少しだけ、その口を尖らせている。
「あんな風に笑われるなんて、ちょっと心外だわ……」
真にしてみれば、俺のピンチに意気揚々と駆け付けたつもりなのだ。それだけにその顛末を笑ってしまった俺に対して、文句を言いたげである。
「別に真のことだけを笑った訳じゃない。だが、悪かった――それと」
「ん?」
「ありがとうな」
「はぁ……?」
顔を向け俺が素直に礼を言ったことが、よほど意外だったらしく。真は次の表情をどう変えるか、自分でもわからなくなったように困惑した表情をしている。
「もう! なんか、さ。調子狂うわ――今日のオジサン」
「ハハ――散々、俺の方が狂わされっぱなしだったんだから、たまには――それもいいだろ」
俺は言った。