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ホントの唄(仮題)
第5章 景色は騒々しく
「オイ、真――?」
ドアの傍らに立った俺は、部屋の中に照明が灯っていないことを不思議に思い、そう声をかけた。だが、室内はひっそりとしたまま、返事もない。
「まぁた、遊んでやがる……」
俺はため息を吐きつつ、塞がった手の代わりに肘をドアノブにひっかけ、それを閉じた。それにより、更に闇を深める室内。照明のスイッチを探し当てようとするが、手荷物が邪魔になって儘ならない。
仕方なく俺は、勝手知ったる部屋の中をそのまま、勘を頼りにして進んでいった。中ほどまで行き床に荷物を下ろすと、再び闇の中へ問う。
「コラ。一体、何がしたいんだよ?」
そのまま、周囲を窺っていると――
「オ、オイ……何だ!?」
ドンと胸を突かれて、俺は身体のバランス失った。縺れ加減の脚が何かに取られた流れで、ドサッと背中より倒れ込む。身体を包み込むような感触で、ベッドの上に倒れたことはわかったのだが……。
「ま、真……?」
仰向けになっている俺の上に、そっと跨って乗る。
「……」
暗闇の中で微かな瞳の光が、俺を見降ろしていた。