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ホントの唄(仮題)
第5章 景色は騒々しく
その状況をベッドに押し倒された格好と知りながら。俺はとりあえず無駄の様な気がしつつも、こんな風に言ってみるのだ。
「さあ、悪ふざけは済んだんだろ? ホラ、どいてくれ」
「ううん、どかないよ。この悪ふざけは、これからが本番なの」
そう答えた真の顔が、すうっと近づいているが気配でわかる。垂れ下がった髪は、ふわりとして俺の頬を撫でつけている。
その距離にやはり焦ると、俺はまるで時間を稼ぐように言葉を連ねた。
「そ、そうは言っても、これから夕飯を作らなきゃなならない。お前のことだ。すっかり腹を減らしてる頃だろ?」
しかし――
「後でいい」
真は端的に、その意志を伝える。そして、もう吐息を感じる処に在る唇で、更にこんなことを言った。
「私の身体って、さ。その瞬間の欲望に正直に反応するよう、できてるみたいなんだ。だから今は、お腹は減らない。他に欲しいものが、あるから――」
「ふっ……!」
それを聞き終えると同時に、俺の呼吸は止められている。