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ホントの唄(仮題)
第6章 急かされて旅立つ

 小さな会社が大企業に頼らず自社製の商品を売出すということは、想像以上にハードルが高いことだと思い知らされている。納期の遅延、クレーム処理、返品と不良品の山――次第に俺自身の業務時間の多くは、ネガティブな作業で謀殺されようとしていた。

 結果的には新規事業を始めたことが、更に会社の業績の足を引っ張った格好となる。そんな事情を受け本年度より、新規事業部の縮小(実質撤退)が決断されたのは、当然のことのように思われた。

 立場上、失敗に終わったことに悔いは残しつつも、俺の肩の荷が下りていたのも事実だった。だが、胸を撫で下ろしたのも束の間。俺はその後の会社の対処に、愕然とすることになる。

 従業員全員を前にして、社長は自らそれを告げた。


「甚だ不本意なことではありますが、業績悪化に伴い当社にあっても雇用を再考する必要に迫られております。つきましては、新規事業部の所属員を対象の中心として、希望退社を募ることと決定いたしました」


 すなわち取りも直さず、それはリストラの勧告である。

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