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ホントの唄(仮題)
第1章 一人と一人

 そうして眺めた女は、予想通り若かった。そして、たぶん美人でもあろう。目の前にしながら、その容姿を『たぶん』としたのは、イメージの問題であった。

 幾ら整った顔立ちであっても、牛丼を貪るその姿はマイナス要素が著しい。その上、椅子に立膝にした右足の、行儀の悪いことと言ったら……。

 マナーに五月蠅かった俺の祖母が生きていたのなら、説教くらいでは済むまい。きっと納屋に閉じ込められて、反省するまで二時間は出してもらえないレベルであった。


 何故、俺がこんな目に……?


 いい加減、眠い目をしながら俺はふと自問する。しかしながら、ここに至った経緯なら、それは単純な話。

 女は握り締めた俺の手を、絶対に放そうとはしなかった。その頬を涙で濡らしながら、自らの空腹を訴え続けたのである。


「ああ、もう! わかったよ!」


 結果、その根性(?)に根負け。俺は女を連れて、近所の牛丼屋を訪れた――という訳。

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