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ホントの唄(仮題)
第6章 急かされて旅立つ
まあ、俺の性分などどうでもいいが、今更会社にしがみつこうなんて気持ちは皆無だ。当然ながら、斎藤さんたちの行為を余計なことと責められる筈もない。嘆願書に添えられた署名に目を通せば、そこには過半数以上の社員と家族にまで渡り、その名が記されている。
「お気持ちは、ありがたく思います。が、俺のことで皆さんが、気に病む必要はないんですよ」
「はあ……しかし……」
口籠る斎藤さんの態度は、何やら根深いものを匂わせていた。
「他にも、なにか問題が?」
「ええ……実は新井さんが会社に来なくなってから、本格的に社員の配置換えが行われたのですが……」
「ああ。新規事業部は、事実上の解体ですから。それに伴うものですよね。斎藤さんにしても、元の職場に戻ったのでは?」
「いえ、それが……私も含め半数は、今後も新規事業部の所属と決まりました」
「え、なんで?」
「そこに残されたのは、私と同様、何れも五十代から上の社員ばかりです」
「――!」
そこまでの話を聞き、俺の中にピンとくるものがあった。