この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ホントの唄(仮題)
第6章 急かされて旅立つ
新規事業部に残されてれた仕事など、せいぜい在庫整理等の後処理くらいのもの。斎藤さんの話によれば、そんな職場に今も八名のも社員が残せれているという。しかもその全員が、年配の社員――とするならば。
俺は経営側の意図が、透けて見えた気した。
「会社は社員のリストラを、諦めてないと?」
「はい……おそらく、飼い殺しにして辞職に追い込むつもりのようです。現にこの何日かは、仕事らしい仕事は全く与えられていません。その上、新任の上司には口厳しく叱責を受けるばかりで……。残されたメンバーは皆、精神的に参っているのです」
元々彼らは、働き者の実直な社員である。そんな人たちがその様な状況下に置かれれば、会社の思惑通りに事が運ぶ可能性も高い。如何に経営が厳しかったとしても、あまりに下劣なやり方だ。
そんなことに怒りを覚えつつも、俺はふと気になったことを訊ねる。
「それで、俺の後釜――その新任の上司ってのは、誰なんです?」
すると、斎藤さんはため息交じりに、その名を答えた。
「太田さん、ですよ……」