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ホントの唄(仮題)
第6章 急かされて旅立つ

 だが――


「……」


 俺の胸に顔を埋め、じっと息を潜めた真の不安は、とりあえず杞憂に終わっている。

 その足音は、俺の部屋の前をあっさりと通過。その主が隣の部屋のドアを開き、その中へ消えて行ったことを物音で確認した。どうやら隣に住む学生が、帰宅して来ただけのよう。

 俺と真はふっと息を吐くと、脱力した身体を床へと横たえた。


「ああ、畜生……」


 ほっとして呟くも、一時のこと。既に俺たちにとって、この部屋すら落ち着ける場所ではないのだ。

 とは言え、無論今すぐに何者かが、真を追いここまで来訪する訳でもなかろう。それは些か、突飛な想像である。

 しかし問題なのは、その可能性はゼロではない点。そして今後の成り行きによっては、その可能性は高まるように思えた。要は俺の対応と、太田の腹積もり次第となる。

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