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ホントの唄(仮題)
第6章 急かされて旅立つ
太田の奴は、俺が連れていた若い女が現在世間を騒がせている『天野ふらの』であることを、(たぶん)SNSの画像により知ることとなっている(筈……)。
何よりも己の利害のみを気にかけるあの男にとって、俺と真の関係や出会いの経緯、その他諸々の一切には興味はなかろう。肝要なことは、それが使えるネタであるか、否か――その一点に尽きるのだ。
そして先ず太田は、俺にそれを匂わせることで、会社に戻るよう暗に促している。もしそれに従うのなら、復帰後の俺には先に予想している以上の茨の道が待ち受けることになることは、想像に易い。弱みを見せた俺の頭を押さえつけ、自分の良いように扱おうと考えている筈だ。
そして仮に、従わなかった時。それは至ってシンプルだ。偶然にも自分が知り得た、この間違いなく金になりそうな芸能ネタを、一番高く買ってくれそうなで相手に叩き売ること――それだけである。
それ故に逆に考えたならば、俺が態度を明確にしていない今の内は、どうこうなっかろうということ。しかし当然ながら、それにも限度がある。
そして、何よりも――。
「私、迷惑だよね……」
難しい顔をした俺を見て、真は言った。
俺はそんな風に沈んだ彼女を、真らしくない――と、思う――が。