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ホントの唄(仮題)
第7章 二人だけの時間に
「お前……」
大小の更に盛り付けた各種の料理が順次、真の口から吸い込まれる様を、俺は唖然として見守っていた。
目の前でそんな食欲を見せられてしまえば、それなりに空腹を覚えていた筈の中年の胃袋は、しかしその視覚効果を以って満たされようとしている。最初に取り分けた小皿のオードブルをつまみとしてビールを傾ければ、俺の方はもう「御馳走さま」と口にする準備が整っていた。
「オジサン、デザートは?」
「いや……俺は、いいから」
そんな感じで何とか夕飯を終えた後、部屋に戻る途中で一体誰が使用するのかと思うほどに寂れた卓球台を発見。腹ごなしとばかりに「やろうよ」と言い出した真に対し「よーし」と乗ってしまったのは、これもまた旅先でのテンションだと言うべきか。
結果的には、これがまた災いの元となる。女子供に負けるものかと少しは良いところを見せようなんて思ったのも束の間。互いに特に経験もなければ力量の程度こそ大差ない筈であるのだが、問題はその部分ではなく何といっても瞬発力と基礎体力において明確な違いがあるのだった。
結論から言えば、その部分で俺を凌駕するうら若き女子に翻弄される疲れたオジサンと言う図式が成り立つと、かなりこっぴどく真にしてやられている。
それで苦笑いでも浮かべておけばよいものを、せめて一矢報いんとして些か剥きになってしまったから、またこれが悪かった。
程無くして――
グキ!
「うっ……」
俺はか細いうめき声と共に、腰を押さえつつその場に蹲ってしまうのである。