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ホントの唄(仮題)
第7章 二人だけの時間に
海における真との戯れの時に違和感を覚えた四十男の腰は、今度は少し「ヤバめ」の鈍い痛みを訴えていた。
「オジサン、大丈夫!」
「あ、ああ……平気だ」
心配そうな真にそう答えたのは、もちろん虚しさ溢れる中年の強がりに過ぎない。我ながら衰えゆく身体に一定のショックを受けながらも、流石にこれでは恰好のつけようもなかった……。
そのせめてもの療養の意味で、真を先に部屋に返すと仕方なくもう一度大浴場へ赴く。患部(というまでではないが)の腰を暖めた後、脱衣場に設置しているマッサージチェアの『弱』の刺激に暫しの間この身を委ねた。
さて、夜はこれから。そして部屋に戻れば、そこには真が待っている筈だが……。
「……」
僅かな期待を覚えつつの若干の昂揚が、入浴後の身体を適度な火照りを伝える。そんな長閑な時間を邪魔したのは、一本の電話だ。びしょ濡れななった海からの流れで、携帯を部屋に置くことなく文字通り携帯していたせいで、耳にしたくもない男の声を聞く羽目になってしまう。
『先輩――例の件、少しは考えていただけましたか?』
「……」
第一声からしてその不躾な言い様は、もちろん太田なのであった。