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ホントの唄(仮題)
第7章 二人だけの時間に
うるせえよ――と通話を切ってしまいたい気分が大半。だが、そうできるなら着信を無視している筈だ。そうできない己の矮小さを自覚しながら、俺は太田からの電話に応対している。
「昨日の今日だぞ。随分とせっかちなんだな」
『先輩のためを思って、ですよ。決断は早いに越したことはないです。会社の方だって先輩の処遇を、いつまでも保留にしてくれるほど甘くはありませんからねー』
「そもそも俺が、そんなことを頼んだつもりはねえんだが……」
『その通り! ですから本来なら、感謝してほしいものです』
「感謝……だと?」
『ええ、寛大な会社側と――それに、僕だってこうして骨を折っている訳ですしねー』
誰がお前なんぞに……。
些か頭にきた俺は、それが太田の挑発であると知りつつも、その時の感情のままに言葉を携帯へと吐き捨てている。
「感謝などするかよ――この下衆ヤロウ!」