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ホントの唄(仮題)
第1章 一人と一人

 牛丼屋を出ると――


「とりあえず、ご馳走さま。それで、さあ。この後、なんだけど――」


 俺を追うように店を出た女は、当然の様に肩を並べ歩き初めた。

 ここで一切の、甘い顔を見せてはいけない。


「うん、気をつけて帰りなさい。じゃあ、俺はこれで――」


 作り笑いを浮べてそう言うと同時に、俺は店の脇の路地を急ぎ曲がった。


「……」


 ジーっとした視線が、背中に突き刺さってくる。だが、そこで振り向いては負け。つれない態度を示し、キチンと断ち切らねばなるまい。

 相手は、『捨て猫』の如き女。本当の捨て猫だとしても、今の俺に拾ってやるゆとりなどなかった。何しろ俺は無職――と、何度も繰り返すのはよそう。


 流石に心が、寒々としてきた……。
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