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ホントの唄(仮題)
第8章 誠実な(?)、情事

 時として俺は――情交に赴き、裸になった男女の光景を――滑稽に感じることがあった。

 ダイレクトに開かれたような肉欲の激しさに反し、内心それを俯瞰して眺め見た時に、その絡まりゆく姿の形に対して頭の深部では逆に覚めた気がしてしまう。そんな感覚が確かにあった。

 日常では決して見せない様なのだと互いに思えば、それが興奮へと繋がり、その時を共にする二人は特別なのだと信じて高まり――だが、その思い込みが何とも滑稽なのだ。

 身の寂しさを重ね合わせ、結局それは――何処まで入っても人としての凡庸な発想からの行為に過ぎないのだと、そう感じて。そんな時が何時の頃からか、ずっと続いていたように思う。


 でも今は違う。違っていると――そう思える。


 弾力で保たれた胸の曲線は弾けるように揺れて、俺の指のひとつひとつの圧力を正しく柔らかさの中に沈めた。

 次第に密着させた肌はしっとりとして滑らかに、その表面は吸い着く様でもありながらも、こちらが求めればするりと何処かにいなくなるようにも感じた。

 適度に引き締まり健康的な肢体。俺の頬を擦る左手。背中に回された右手。細長い両脚は足先まで神経を通わせた如く、頻りと絡みついてくる。


 そのおよそ見たことも感じたことすらない魅惑。しかし、それを以って違うというつもりなど、今の俺にはなかった。
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