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ホントの唄(仮題)
第8章 誠実な(?)、情事
セックスとは、ある意味で解放。それまでの俺の人生では、その様な側面があったことは否めない。
しがない世間から、束の間に解放され。小難しく理屈を捏ねることから、解放される。恰好つけようのない裸の姿が、そうさせてくれた。
だが今の俺は、やや違うのだろう。快感に溺れないよう思考に負荷をかける、という取り留めもない事情はあるにせよ。だが、そうではなく。俺はこの後に及んで、真の為に――などと、考えてしまっているのだ。
だから――自問。
こんなにも真っ直ぐであるのに、この真が――ホントの唄ってやつを、唄えないのは――何故か?
恐らくその理由は、そんなにも難解ではあるまい。しかし、それ故にそれを打破するのは、決して簡単ではないのだ。そう、察する。
彼女を中心に、取り巻く環境。俺の知る由もない芸能という世界。心酔し取り巻く数多くのファンは味方であると同時に、時として巨大なプレッシャーとなり苛むことも。その最中で若い真が抱えたジレンマは、俺の貧弱な想像を遥かに超えよう。
それでも――だからこそ。限られている故に、それは明快であるようにも思える。
こんな俺にもできることは、確実に――ある。
真と身体を重ね、俺はそんなことに気がついていた。