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ホントの唄(仮題)
第1章 一人と一人
四十を迎えた男が構える住まいとしては、そこは明らかに脆弱な部屋。だがこの先は、この部屋を維持するだけでも大変となる。その理由は最早、述べないが……。
改めて己の置かれた立場を弁え、俺はようやく頭の中を切り替えた。何処の誰とも知らない女のことで、気を裂いている余裕などないのである。
俺は階段を静かに上がると、自室『204号室』のドアを開き、入口側の照明のスイッチをパチリと押す。
それにしても、今日は疲れた。さっさと、寝よう……。
ヨタヨタとした足取りで、部屋に入ろうとすると――
「うーん……ちょっと、狭くない?」
「あ? そう言うなって」
「でも、さあ。想像してたより、片付いてるかも」
「まあ、それなりに――――――――なっ!?」
それは、寝惚けていたせい。会話を二往復して、ようやく俺はハタと気づく。
「アハハハ!」
「ア、アハハハ……」
などと、つられて笑ってる場合ではないのだ。
「オ、オイ――お前っ!」
「うん。つけて来ちゃった」
いつの間にか俺の傍らに立ち。
女は悪びれた様子もなく、とても楽しそうな顔をしている。