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ホントの唄(仮題)
第9章 対峙して、知るもの
「先程のお話によれば、ふらのを連れ現在は旅先であるとのこと――そう仰っていましたが。それはまた、どういう理由で?」
「それは――買い物先で撮影された画像が、どうやらSNSで拡散したようで……。その場所も特定され、彼女が不安を覚えた為に……そんな訳で、思い切って……」
しどろもどろに話しながら、俺の額に冷や汗が浮く。俺の中に生じていた動機を話すわけにもいかず、どう考えても無理のある説明だ。
そんな俺を見透かしたように、上野さんは厳しい追及を続ける。
「それは常識的に考えて、大きなお世話かと存じますが」
「しかし……」
「大体、この間――貴方は、お仕事をどうされているのですか? まさか、お休みになっていると?」
ぐっ……!
予期せぬ処から飛んできた言葉のナイフが、俺の弱点を的確に抉る。矢継ぎ早に責められた俺は、正にぐうの音も出ないといった様相であった。
情けない心情の俺を尻目に、上野さんはコーヒーを一口。それから深いため息をつき、改めて俺を見据える。
「情を移しても、無駄ですから」
「は……?」
「ふらのと貴方とでは、住む世界が違います」
――カチン!
それは漫画の擬音、そのままの音色。それが俺の頭の中に、鳴った。