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ホントの唄(仮題)
第9章 対峙して、知るもの
「私も当初は、まるで考えにはありませんでした。親子である、と口にするのも憚られるほどに、私たちの関係は脆弱なものでしたから。そうなったのも、全て大人である私のせい……寧ろ真の前から消え失せることこそ、彼女の為ではと考えたくらいで……」
「では……?」
「真の母親のことは――何か、聞かされていますか?」
「え、いや――」
その問いに不意を突かれ、俺はやや間を置いて思慮する。
この場合の母親とは、真の実母。そう思い辺り、俺は話を続けた。
「真が、まだ幼い頃――両親は離婚している、と。『もう、顔も思い出せない』――確か、その様にも……」
「そう、ですか……」
上野さんは静かに言って、僅かその顔を強張らせている。
「その母親が、なにか――?」
「ええ、あれは――夫の告別式から十日が過ぎた頃――」
「……?」
「――彼女は、私を訪ねています」
「――!」